知っておきたい病気、 糖尿病治療薬の進歩と慢性腎臓病
「泌尿器科の先生から、糖尿病はないけれど腎臓が悪いからと言われて糖尿病の薬を処方されました。」というケースがあります。同様に循環器(心臓・血圧)専門の先生から、糖尿病ではないのですが、糖尿病の薬が処方されたりすることが増えてきました。これらはSGLT2阻害剤と云う比較的新しい糖尿病治療薬の話です。腎臓の糸球体と呼ばれる部分から糖分を尿中に濾過し、それを再吸収しています。そこを阻害し、尿中に余分な糖分を排泄することで、血糖を低下させることを期待された薬剤です。その後この薬を使うことで、血糖改善は当然ながら、さらに直接的に心臓の合併症などを減らすことが証明されました。
また同様に慢性の腎機能低下にも効果がある事が分かり、注目されています。
長年糖尿病の合併症の一つとして糖尿病腎症と云うものが重要視されておりましたが、やはり糖尿病の有無にかかわらず、慢性の腎機能低下にこのSGLT2阻害剤が予防的効果がある事が分かってきました。現在、一般的な慢性腎機能低下をふまえて、慢性腎臓病を以下の様に定義されています。
①尿異常,画像診断,血液,病理で腎障害の存在が明らか.特に0.15 g/gCr 以上の蛋白尿(30 mg/gCr 以上のアルブミン尿)の存在が重要
②GFR<60 mL/分/1.73 m2
① の蛋白尿は以前より、健診などで利用されている検査で、外来などで簡単に検査できます。ただし、様々な状況で陽性になりやすいので、できれば早朝空腹時に検査することをお勧めします。
②のeGFRは、近年様々なところから周知が計られているので耳にされた方も多いかと思います。腎臓が濾過する能力を年齢、性別、体重から特殊計算にて算出したものです。こちらも、現在では特定健診、職場健診などで、測定していますので、かかりつけの先生などに、自分の腎機能の評価を確認しておく事をお勧めします。
一方、世界的にも末期腎不全によるによる透析患者が増加しており,医療経済上も大きな問題です。また、慢性腎臓病は糖尿病,高血圧などの生活習慣病が背景因子となって発症することが多く、メタボリックシンドロームから、進展することが注目されています。
そのため、可能な限り早めに意識して生活習慣の改善に手をつけることが重要です。ただし、飽くまでも慢性の疾患ですので、検査がたまたまある数字を示したからといって、1回で診断できるわけではなく、3ケ月以上同じ状況であることが必要となります。
図は厚生労働省の研究班が公表している、病気に応じた腎疾患対策の図ですが、この中で強調されているのは、かかりつけ医と専門家とのそれぞれの時期に適した連携です。一度かかりつけ医から指摘された方は、他の合併症や病気の進行に合わせてそれぞれ的確なな時期に専門医に相談しながら、対応してゆくことが肝要です。